2007年12月05日

THE TROUBLE WITH PHYSICS Lee Smolin

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THE TROUBLE WITH PHYSICS
Lee Smolin

ウィッテンが何を考えてるかじゃ無い、君の意見が聞きたいんだ−(p275 超訳)

 これは、いい本ですね。

 表紙は「ひもが絡まって、歩けないぞ」でしょうか。
著者はループ量子重力理論の人で、以前「量子宇宙への3つの道 」(2001年)という本では割と好意的に超弦理論の事について書いていたのですが、今回は超弦理論や研究機関にたいする強い批判と未来への提言をしています。
 たぶんもう黙っていられないような何か、があるのでしょうね。

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Superstring Theory

 超弦理論、スーパーストリング理論、超ひも理論等々、いろいろな日本語で呼ばれていますが

初めて知ったのは大昔に読んだ(確かブルーバックスの「アインシュタインを超える」の初版)、
「長年失敗してきた、一般相対論と量子論の統合ですが、超弦理論は自然に重力子(グラビトン)を含んでいるので量子重力まで含めた統一理論が生み出せる唯一の候補なのです。相互作用の計算にも無限大の困難は現れません。ゴールはもうすぐだ!」
と主張している本でした、
へーこれは凄いことが起るぞー。みたいな認識でした...が。

 現在は、当時の楽観的な予測とはかなり違う様相になっていて
「数少ないひものパラメーターから全ての観測された素粒子を導きだせる」
はずだったものは未だ叶わず、実証や反証可能な予測を何一つ導けないまま現在まで来てしまっているといいます。
 どうもそれでも気にしてないみたいですが。

 また、唯一の超弦理論というものを構築できず、それぞれがM理論というもっと大きな枠組みの解の一つである。
という話しになっていて、探求はひろがる一方のようです、

 この状況を、これこそ現実の宇宙のありうるべき可能性の集合だ、ととらえて、宇宙の理解が深まっているのだと解釈する学者もいれば、それはごまかしではないのか?過去20年なにも検証可能な予測ができなかったのは既に物理学としては失敗なのではないか?
と厳しく解釈する著者のような人もいる...というのが現状のようですね。

批判のツボ

  理論構築に背景に固定された時空の存在を仮定するという
 背景依存 Background-Depence の視点に留まっていることが、
超対称性や余剰次元の導入につながり、混迷を招いた原因なのではないか?

  真の量子重力理論であるためには、その理論から
 時空自体が規定されるものでなければならないが超弦理論はそうではない。

  仮に超弦理論が正しいとしても、
 背景独立 Background-Indepence なもっと根源的な理論が必要なことには代わりが無い。

 他のアプローチに、もっと力を入れるべきだ。

  しかし学問というより、社会学的な問題が現在の研究組織にはあり
 主流以外の新しい試みに対して排他的に機能するため、進歩を阻害してしまっている。
 実際、超弦理論以外のアプローチをとることが若い世代の研究者としては難しくなっている
 この現状をなんとかしたい。

 といった感じでしょうか。
 
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 本の中では様々な理論と人物が紹介されています。
 
 Doubly Special Relativity
 Causal Dynamics Triangulation
 Loop Quantum Gravity

 現在はループ量子重力理論の時空の励起状態として実在の素粒子を記述できないかという試みまで行われている。とのことです。
 
 超弦理論が唯一の統一理論の候補というのはもう昔話で、
 違う理論が出来つつあるならばどんどん育って欲しいです。
 
 何故って見たいから。
 この世界のヒミツをちょっとだけでも。
 
 その他、この本、内容がなかなか豊富で読みきれないので、  後々補足するかもしれません。

 
オマケ
「Smolin の量子重力理論について語り明かしたいわ。」
(2007年フジテレビ月曜夜9時ドラマ「ガリレオ」第4話にこんな台詞があって笑ったひと..いますね。)



20071216
追記)なんと読んで一週間で、翻訳版が出ました(笑)
 邦題をどうするのかチョット気になってましたが(「物理学ヤヴァイ」とかだったらどうしよう...とか)。無難?に「迷走する物理学」ですね。
最近売れている「ワープする宇宙」や、「宇宙のランドスケープ」などと比較するのと、違いが楽しい(かも)。


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2006年09月12日

ステルス・デザインの方法

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ステルス・デザインの方法 長沼伸一郎著

物理数学の直感的方法」の著者の最新刊です。

  戦闘機等のレーダー対策技術であるステルス技術が、都市や建築物の閉塞感や圧迫感を低減する技術として転用ができ、様々なデザインに応用してゆこうという試みです。
著者のページではかなり昔(10年くらいでしょうか?)から一部紹介されておりましたが、やっと出版されました。
息の長い研究をされています。

 内容はステルス技術の複数の手法の紹介と、イルカのソナーの類推で体感的に「広さ」を感じさせるための手法の説明、そしてモンサンミッシェル修道院と三十三間堂を例にステルス・デザインの観点からの解説が述べられています。
面白いのは、近代建築で考慮されてこなかったステルス性というものが三十三間堂を例に具体的に数値が出せてしまうところです。近代化によって何が失われてしまったかを示す、具体的な指標が手に入ったことになります。

この切り口から、さまざまな場所(都市景観、駐車場、マンションの廊下、お部屋の隅っこなどなど)のデザインへの応用のヒントが述べられています。建築やインテリア、景観関連のお仕事をされている方は一読の価値があるでしょう。







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2006年09月08日

ザ・マインドマップ

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ザ・マインドマップ

 電話で長話をしていると、ついメモに謎めいた幾何学模様を書いてしまったりしませんか?
 あるいは会議や講義でメモを取るのがとても苦手で、やっぱり妙な図形と僅かな単語を書きなぐるのが精一杯の人はいませんか?
私はそれでした。

 マインドマップという手法は
ひとつのキーワードから、連想されるものを放射状に枝を伸ばしながら追加してゆきます。
 その際、色やイメージを多用します。そうすると出来上がった絵を見て脳が喜びます。
 この記述方法は自分にはとても威力がありました。
 通常のノートの記述だと論理的なつながりを守ろうとするのか無意識に、検閲=>削除されてしまっているような要素も、単に「連想されるものは枝を伸ばす」ということで取りこぼすことなく追加されてゆきます。

 仕事ではMSプロジェクトを使ってスケジュールを出したりしていたのですが、実はその前にプロジェクトの構成要素のマインドマップを書いて、実際はそっちを見ながら実現の進行を考えていました。成立するもの、断念するもの、実現の壁が硬いので戦力を集中しなければならないもの。トラブルのようで実は大きな問題になりえないもの、等など。まるで生き物を見ているように、それぞれの枝の持つ物語を楽しみながら仕事を進めることができたのでした。

 お仕事にも、自己分析にも、読んだ本の要点の整理にも、気づいていなかったLINKの発見にも、使えます。コレは
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2006年09月02日

GNU Development Tools

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GNU Development Tools
先日取り上げた本が無事本日、伊予の国より到着しました。 
さあ、gccと、hello.c で遊びましょう

かつてUNIX USER(現オープンソースマガジン)でGCCプログラミング工房を連載されていて、眼から鱗のよい記事を書かれていたのに、プッツリと2年ほど沈黙されていた(何かあったのかと心配しておりました)西田亙氏の出版です。いい仕事してます。
 PC-UNIXいじり始めの方、プログラマーで、考える間もなく gcc hello.c を通過してしまった方は見ておいて損はないです。

(いつかお遍路で伊予の国にたどりついたら著者にサインをもらいたいものです。)





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2006年08月22日

物理数学の直感的方法 第2版

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物理数学の直感的方法 第2版
 この本にお世話になったのは初版(1987年)の頃。当時はこの手の数学のエッセンス部分を可視化して直感的な理解を助けることに重点を置いた書籍は皆無だったので実に新鮮でした。(試験間際でさっぱり理解ができなかった関数論の試験で、この本の留数定理あたりがモロに出て突破できた思い出があります)

可視化の価値:
数年たって大学に残った友人を訪ねた時に、Mac?のmathematica上で球面調和関数のアニメーション(球体の振動パタンを表す)を見せてもらったとき。ああ、この映像を初めに見ていれば、理解するのに余計な苦労はしなかったのに。これを見ているアメリカの小学生にかなわないわけだなあなどと思ったりしました。
そもそも人間の脳は言語処理以前にイメージ処理を行っているという説があり(マインドマップ等)、モノクロの数式ばかり並べる本というものはもっとも脳に負担を強いると考えてよいと思います。さまざまな分野で可視化やカラー化の試みが必要そうです。

第2版(2000年)
 追加されたのは、3体問題と複雑系というタイトルで、この章だけ毛色が違い、迫りくる学科試験対策ではなく、デカルト以来の分析手法の限界や、社会思想のさまざまな分野で見え隠れする「ハーモニックコスモス信仰」と名付けられた近代文明の大きな誤解を浮かび上がらせる重大な内容になっています。
 
 その際使われる「作用マトリクス」という手法の紹介ですが、線形代数の知識と無限の濃度に関する知識から、3体問題が解けないとはどういうことかを手始めに、話は壮大な展開を見せてゆきます。
(正直これだけでも私の頭では?でしまいますが....... 思うことを書いてみます
 この項は、一般的な行列のN乗計算でNを無限大にもって行ったときに、個別の要素の演算回数が可算無限に収まるもの=対角化可能なものと、非可算無限になるものがあるということがどうやらツボで、実は解析学で言う関数とは前者のみしか扱っていないという理解でいいのかなあと今は考えています。多体問題になったとたん、その解の関数?は前者の集合の中には明らかに存在しない......またカントールが見え隠れしてるし。...わからないのでここで止めておきます。)


20080530 追記 ----
 この本の「作用マトリクス」について気づいた事をPDFで追記しておきます。

内容は
 ○作用マトリクスは単純な式で指数行列に置き換えることができて、既存の微分方程式の解法やリー代数との対応づけができる。
 ○作用マトリクスが「対角化可能=微分方程式が解ける」という「対角化解法」という主張は誤りで実際は上記の対応で全て解けることがわかる。

詳細PDFはこちら

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一方、社会に眼を向けた場合
二極化の数学的基礎?
□何故、個々が自由に利潤を追求すると世界は「二極化」し、決して最大多数の幸福という状態にはなり得ないのか。
□専門化を進めてゆくと、何故世界を理解することができなくなるのか。
□遺伝子配列の解読だけでは、何故「解読」されたことにはならないのか。
□「誰にも迷惑をかけていないからイイでしょ」が何故迷惑になりうるのか。

などなど。文系の人こそ読んでおいたほうが良い内容ではないかと思います。

この分野は、なにか壮大なものが見え隠れしている、まだまだ人跡未踏の荒地という感じです。

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表紙がなんだか錬金術師の工房みたいな印象でしたが。表紙の古い数字やら演算記号のクイズ(カバー裏折り返し参照)の答えを調べるとちょっとニンマリできます。ダ・ビンチコード気分?

そして遠景に微かに見えるお城(モンサンミッシェル)が実は6年後に出版される「ステルスデザインの方法」の予告になっています。そこまで考えていたんですね。
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posted by ketaru at 14:25| Comment(6) | TrackBack(0) | ブックレビュー

2006年08月20日

GNU開発ツール

西田亙さんという方のPC-UNIX関連のGCCプログラミング記事が質が高くて好みなのだったのですが、この数年沈黙されていて気になっておりました。

どうやら、自ら新しい本「GNU開発ツール」を出版されるようで、これは買いかななどと、ささやかながら応援いたします。

OVERSEA PUBLISHING
http://www.oversea-pub.com/

Wataru's memo
http://www.wnishida.com/~wmemo/
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2006年08月17日

無形化世界の力学と戦略

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無形化世界の力学と戦略
上下 1997年 長沼伸一郎著

「知的冒険の書」

この本の内容は、

経済を陸軍に
マスコミを空軍に
大学を海軍に

それぞれ軍事力換算して、一見、平和な世界の背後で行われている不可視の(無形化世界の)戦争状態を可視化するという
とんでもない試みです。
そして、浮かび上がる世界は表面的な国際問題の議論「アメリカが」「中国が」「ロシアが」...では見えなかった別の姿をあらわします。

中国型 (世界統一型)=> アメリカ、中国
ヨーロッパ型(勢力均衡型) => ヨーロッパ、イスラム、日本

1997年の段階でよくぞここまで見切ったものです。

なにより得たものは「ああ、こんなに世界を自由に考えていいんだ。」という安堵感でした。
そして、内容の細かい点(マスコミCMや投資資金の軍事力換算の手法など)を追求する読み方よりも、これを読んで自分の中に触発される、世界に関する新たな知見と、そこから得られる今後「この世界でどう生きるべきか。」に関するヒントのほうがあまりにも価値がありました。

その中で自分にとって最大のものは、
「物事を成し遂げるための一勝負は20年程度のスケール。大抵の人間は一生に1回、運のいい人で2回しかチャンスは無い。ところが、マスコミが何かにスポットをあてて、物語を消費してしまうスケールはせいぜい10分の1の2年程度。現在の世の中で何かを成し遂げたいものは残りの18年という時間を、何者も当てにしないで遂行するだけの意思の力を持ち続け無い限り成り立たない。」
「そっか、あきらめるのが10倍早すぎるのだ。」
「普通に生きていると、事が成就するまでの期間を見積もる感性が日々のマスコミ情報で攪乱されてしまうのだ。」
ということでした。

さらに。

日本の針路というとき経済問題ばかりにスポットが当たることは、
陸軍のみの勝ち負けばかりに矮小化したものに話がすり代わっていることとなる。
マスコミの圧倒的な強さ、それは正に空爆として可視化される。
実は既に行政権力ですら逆らえない程の力の差が存在している。

おとなしく降伏しない選択をとった場合
対抗手段として、何故「ゲリラ」が成立しないのか?
そのような世界でサバイバルするための別の方法はなにか?
潜水艦?
そのために必要な時間と人員はどの程度のスケールか?
世界が行き着く大きな可能性「コラプサー」とは?
日本は何をすべきか?

などなど、見る人が見ればヨダレの出そうな内容です。


理解を助けるのに背景として必要となるものを挙げると「幕末日本」「軍事史」「西欧史」などなど。特に戦後の平和教育で穴が開いてしまっているジャンルの知識が必要なようで。初版の刊行から既に10年近く経過しているのですが未だにこれはいったい何だろうと楽しめているのでした。

おそらくこの本を元ネタにすれば、社会でもビジネスでも数十冊「通俗本」が書けるのじゃないかと思います。

link:パスファインダー物理学チーム
無形化世界の分析はさらに深化しているようです。
posted by ketaru at 12:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ブックレビュー